2013年 07月 07日
距離計非連動式
自身にとっては機材と戯れることの一環だとはいえ、いつもおつきあいいただく方々には厚くお礼を申し上げる次第です。
で、早速予告通りに種明かしをさせていただくと...
いわゆる<OLYMPUS SIX>です。
1940年の登場以降、幾度もの発展を重ねたこの機種はOLYMPUSのカメラメーカーとしての基礎を築いたことで知られます。
このたび私の手許にやってきたのは、その最終形<OLYMPUS CHROME SIX RII>でした。
発売は1955年で、単独距離計やレバー式フィルム巻上げ、自動巻止め(6×6判のみ)などの機能を搭載した高級機だったようです。
OLYMPUS初のカメラがセミ判による<Semi OLYMPUS>だったことの反映でしょうか、6×6判から切替えて6×4.5での撮影も可能となっています。
75mm、F2.8の明るい方のレンズ付です。
OLYMPUS製カメラ(フィルム時代限定)には、ファン故の特別な関心を持つ私ですが、些か偏った興味に過ぎなかったのはご承知いただいていることと存じます。
具体的にはPEN、OM、XAという、いわゆる米谷美久氏によるモノに限定していたといっても過言ではなかったでしょう。
こんな姿勢が変わるきっかけとなったのが<OLYMPUS 35K>でした。
ボディがかなり縒れ、しかしレンズの状態はとても良好な1台を手にして何気なく撮った結果が驚くべきものだったからです。
それは「OMやPENだけがOLYMPUSではない」という、至極当たり前のことを私に気付かせるには充分でした。
そんなわけで、米谷氏以前のOLYMPUS史にも目を向け、“名機”の入手にも相応の注意を払い、その入手もボチボチながらも進めてきております。
当然、この<OLYMPUS Six>も、少し前にご紹介した<OLYMPUS flex>も、基本の基本というべきカメラ。
ただ、どんなに綺麗でもキチンと使えないカメラなら私は要りません。
OLYMPUSの中古カメラは何故か値段も高めである上に、そのシャープさを誇るはずの肝心のレンズに難がある個体が多く、フィルムカメラが投げ売り状態の今となっても(だからこそ)、良き巡り会いは意外に少ないものです。
急にトントン拍子という具合に相次いで入手できたこのところですが、前述2機種のいずれかが一つの関門であり、その突っかえが取れたせいかと振り返ります。
さて、やってきた個体は、外観、レンズはそこそこ良いものの、大きく歪んだトップカバーという大きな問題を抱えていました。
このせいで蛇腹を折り畳んで収納しようとしてもロックが効かないのです。
ほぼ真四角なはずのファインダーフレーム部が菱形に変形していたくらいですから、かなりの衝撃を与えたものと思われます。
それでも歪みは比較的素直だったため、それなりに修正ができたのはラッキーというしかありません。
トップカバーを外し、木槌で丁寧に叩いたところ、菱形は少し歪な正方形程度になり、フォールディングカメラならではの開閉もスムーズになりました。
各機能や作動にも問題はないようなのでフィルムを装填、ザッと撮影することにしたのですが、入手したボディにはセミ判用のフィルムフレームも付いていたため、敢えてセミ判で臨むことにしたのでした。
果して、各操作には何のまごつきもなかったものの、終始馴染めないままフィルム1本が終ってしまった感を拭えません。
即ち、「ファインダーでピントを合わせるわけでない」という事実です。
内蔵された距離計の高精度さはファインダーの二重像合致で窺えるのですが、距離計とレンズ駆動の連携がなされていないので、ファインダーで距離を合わせたところでレンズは何等動かず、要するに焦点合せは何もできていないということ。
「そんなことならピント合わせは始めから目測でやればいい」
通例の私ならこう考えて実行するところでしょう。
しかし、今回に限ってはどうしても躊躇わずにはいられなかったのです。
そもそも、今となってはかくなる効率のために使用せんとするカメラではないと思うからです。
逆にそうすることは野暮ともいえそうな気がしました。
そんなわけで、距離計の示した数値にレンズの距離目盛を合わせてから撮るという本来のマナーに則ったわけであります。
斯様に、自身では野暮を避けたつもりでも、やっぱり身の丈には適わず、終始居心地の悪さを感じながらの撮影となってしまった事実は否めないということでしょう。
また、現像後の画像にも少し疑問が残りました。
まず、あの<OLYMPUS flex>で得られた感動がありません。
全体的な雰囲気を語るまでもなく、鮮鋭さだけをとっても遠く及ばぬ結果に終っています。
自身の撮影ミス、スキャンの不具合、かたやボディ自体の調整不足を疑う必要もありますが、とにかく幾つかの問題を残した初撮りだったとの判断を下すほかはなさそうです。
今度は本分の6×6で再度トライしてみるつもりですが、そんな折、長年黙殺を決め込んでいた「あるモノ」がまたまた転がり込んできたりしたもので、今しばらくのご猶予をいただきたくお願い申し上げます。